協会は、理事会からの諮問を受けた事業運営会議を中心に検討を進め、「中期計画」(平成27年度から平成29年度)を取り纏めた。
「中期計画」において、協会が中期的に目指すべき方向は、(1)フィールドの専門技術を集積した技術セクターとしての協会、(2)会員のニーズにタイムリーにお応えするとともに、公益的ご要請にも可能な限りお答えできる協会、(3)コミュニケーションの広がりや参加する楽しさが実感できるオープンな協会、(4)一般社団法人としての健全な財政基盤を持った協会の4点であり、この中期計画の期間において取り組む重点事項は、(1)経験に学ぶ安全への取り組み、(2)技術革新・先進技術への取り組み、(3)技術継承のための教育訓練等への取り組み、(4)会員の参加の幅を広げる取り組み、(5)健全な財務基盤を実現するための取り組みの5点である。
これらに沿い、平成28年度には、協会の基盤である会員数の増を図るべく「会員増強キャンペーン」を引き続き進めた。また会員サービスの更なる向上を図るほか、各事業の受注強化につとめる等、中期計画最終年度の平成29年度末に向けて、諸施策を着実に推進した。
具体的には、収益の面では、今年度も引き続いて「会員増強キャンペーン」を行い、会員数の増による収入増を図った。また収益事業の確実な遂行に努めるとともに、燃焼性試験事業については手数料の改定をお願いし、調査・研究テーマや会誌への広告掲載については協会としての特徴を生かすことなどにより各社様からの受注増に努めた。
他方、経費の面では会員サービス強化に要する関係各経費の増、「安全技術部」の新設、燃焼性試験事業への取組み強化他、協会内体制整備に伴う経費増等が必要となったが、同時に諸経費の節減につとめ、収支改善を図った。
この結果、年度首の見通しに比べると大幅に収支が改善され、約180万円の黒字とすることが出来た。
今後とも良質な会員サービスの提供のためには健全な財政基盤が不可欠であり、これを維持し強化していくため、平成29年度においても更に一層の収入増と経費節減に努める。
以下に平成28年度に当協会が実施した事業等の概要を記す。
会員各位のご理解のもと、本部、支部も関係の皆様と一体となって、平成27年度から2年間に亘る「会員増強キャンペーン」を展開して新たに会員への入会慫慂に積極的に取り組み、会費収入比率の改善を目指して来た。
これに対応して、「会員台帳・会計処理システム」を平成27年度から本格導入するとともに、「職場相談員委嘱規程」を制定し、個人会員の皆様と協会との重要な橋渡し役を務めていただいている「職場相談員」の制度確立を図り、協会としての支援体制を充実してきた。これらの取り組みの結果、平成27年度、平成28年度の2年間で個人正会員を約1千人増とすることが出来た。また団体正会員についても増とすることが出来た。
平成29年度も引き続き、個人会員及び団体会員の入会慫慂に取り組んでいく。
「中期計画」に基づき、専門的かつ継続的に車両に関する安全問題を議論する常設委員会として、平成27年度に「車両安全技術委員会」を新設し活動を開始したが、28年度にはその諸活動が本格化するのにあわせて、事務局として本部内に「安全技術部」を新設し、諸課題に取り組んだ。
理事会から事業運営会議に諮問している「協会の財務基盤の健全化方策」および「技術継承のための教育訓練プログラム等」の2つのテーマについて、平成28年度も引き続いて検討を深度化した結果が理事会に答申され、了承された。
(4) 「技術継承のための教育訓練等」に関する検討結果の取りまとめ理事会からの諮問を受けた事業運営会議において、協会会員のニーズにマッチした技術継承教育の内容等についての審議を継続するとともに、習得した技術力を評価・認定する方法の検討については、前期に設置した「技術継承教育検討部会」を通して、各業界の現状や各鉄道会社の考え方を幅広く調査・整理した結果、協会としての取組の方向性や可能性を纏めることが出来た。
平成27年度に車両部門の技術認定試験受験者の履歴管理のデータベース構築および認定証のプラスチックカード化等の支援システムが完成したので、この成果として平成28年度は合格者に対して各鉄道事業者制定の顔写真・QRコード付認定証を初めて発行・配布することが出来た。
これに続き、平成28年度には機械部門についてのシステム開発を行い、平成29年度からの本格稼働に備えた。
<一般テーマ> |
(一般テーマとは、広く一般の会員各位から対象とすべきテーマを募り、適切なテーマを選定して、調査・研究、技術・サービス提供に取り組んでいるものを指す。以下各項について同様。) |
鉄道における安全・安定輸送が強く求められる中、車両関係における調査研究としては、これまでも品質向上と技術継承を主要なテーマとして取り組んで来ている。
平成28年度においては、車両委員会の下に設置している3つの部門、「品質向上部門」、「技術の継承部門」、「技術の展開部門」において、昨年度に設定した課題を持続的に確実な成果に結びつけていくと共に、関係個所から期待される諸課題に積極的に取り組んできた。
加えて、車両用材料燃焼性試験に関して、国が国内の技術基準に加えてEU規格等の国際標準に対する対応を検討している現状を踏まえ、新たに有識者等による勉強会を立ち上げ、情報の収集や新たな試験方法の検討を行った。
<特定テーマ> |
(特定テーマとは、特定の会員等から特定のテーマについての提案を受け、支援も得ながら、調査・研究、技術・サービス提供に取り組んでいるものを指す。以下各項について同様。) |
平成28年度に実施した特定テーマは、以下のとおりである。
(国土交通省:継続)
(JRグループ5社:継続)
(ジェイアール西日本テクノス、JR東日本テクノロジー:継続)
(JR東日本:新規)
平成27年度に発足した車両安全技術委員会を事務局としてサポートするとともに、中期計画に基づいて車両の安全確保に関する諸課題に取り組むことを目的に、今年度新設された安全技術部で、以下の諸活動に取り組んだ。
平成28年度に実施した特定テーマは、以下のとおりである。
(東京地下鉄:新規)
近年、鉄道において安全性、快適性、バリアフリー、環境問題等に対する社会的ニーズが非常に高くなってきており、ホームドアや昇降機、空調等の機械設備が加速度的に増加している。今後も東京オリンピックに向けて、機械設備(ホームドアの整備等)の大幅な増加が見込まれる。
一方で設備の老朽化や設備増に対応して効率的なメンテナンスのニーズが一段と高くなっている。
また、平成26年度から昇降機に耐震対応が求められ、新設のエスカレーターについては、設置基準等が示されたが、既設の更新時期を迎えるエスカレーターについては、具体的対応が現在示されてない状況であり、課題となっている。
このような中で、機械委員会では、平成26年度末に中長期のビジョンを作成した。鉄道における機械設備は、一般機械設備に比べて、その使用条件・施工条件などで特殊な場合が多く、システムの最適化や効率的なメンテナンス、マネージメント等の成果を上げるには、鉄道事業者、メーカー、工事・サービス会社間の連携が不可欠の状況になっている。
そのため、従来から機械委員会において各技術小委員会を設置して、分野別に検討を進めることによって課題解決に一定の成果を出してきているところである。
今年度は、常にお客さまや社会のニーズに対応していくことを念頭に、機械委員会の下で策定された中長期ビジョンに沿って、以下の活動を実施した。
また、上記の中期ビジョンに基づき、調査研究活動の中期計画(基本的考え方、実施件名(案)等)を策定した。
平成28年度の特定テーマについては検討したが、実施に至らなかった。
また現場の作業に近いテーマを基に、臨海鉄道を始めとするJR貨物の関連会社との関係も構築することに取り組んできて、徐々にではあるが実績が上がってきた。
平成28年度は前年度に引き続き、上記の事柄に取り組むとともに、以下の活動を実施したが、年度の途中から特定テーマを2件スタートさせたことにより、一般テーマが遅れたため、平成29年度も引き続き研究することとした。
平成28年度実施した特定テーマは、以下のとおりである。
(JR貨物:継続)
(JR貨物:新規)
(JR貨物:新規)
平成28年度は、車両関係で約1,600名、機械関係で約3,800名の方が受講、受験された。
平成28年度には1,426件(コーンカロリメータによる試験88件を含む)を受託し、実施した。
今年度の全国「車両と機械」研究発表会は、2月23日、24日に開催された。
「安全・故障防止対策部門」に27件、「技術開発・サービス向上部門」に38件、「作業改善・提案部門」に22件、3部門合計で87件の応募論文中から選考された、「安全・故障防止対策部門」10件、「技術開発・サービス向上部門」11件、「作業改善・提案部門」7件の、計28件の論文が発表された。
恒例となっている技術セミナーを、鉄道固有技術及びその周辺技術に関する9テーマを取り上げて、9月から12月まで計4回開催した。
また、関東以外の会員に対するサービスとして、関西においても2月に開催した。
受講者は延べ380名であった。
鉄道事業者及びその協力会社の若手機械関係社員を対象に、各社の将来を担う若い技術者にニーズを先取りし課題に挑戦していくことを伝えるとともに、現在の新しい技術の一端と開発事例を紹介することにより、自らが考え行動する一助となることを目指した「機械技術セミナー」を開催した。
鉄道設計技士(鉄道車両部門)試験の受験準備を目的に、分野別専門講師による講習会を7月30日に開催した。
受講者は49名と、多数の方にご参加をいただいた。
平成28年度は、InnoTrans2016の開催に合わせて視察を行うとともに、ヨーロッパにおける鉄道車両及び部品製造の調査に重点を置き、車両検修基地、駅設備関係の調査や各種優等列車乗車調査も併せて実施した。
メーカー各社をはじめとする会員各社からの技術情報発信に対する会員の要望にこたえるため、昨年度に引き続き定例総会に併施する形で「ポスターセッション」を開催し、18社42アイテムのご参加をいただいた。
協会誌「R&m」について、幅広い読者層に親しまれる技術専門誌として、新しい研究開発の紹介や技術解説、現場で取り組んでいる諸課題などを掲載し、充実した内容、判りやすい記述、タイムリーな情報掲載に努めた。
また、会員に、より読まれる会誌とするために、メーカー各社、公民鉄各社、メンテナンス各社等からの記事による特集記事、企画記事、座談会記事を随時計画した。
併せて、読者に対する提供情報量拡大の意味も含め、広告掲載企業の拡大に努めた。
今年度も例年に準じ、特別功績賞、功労賞、功績賞、優秀技能賞などの表彰を行なった。
また、全国「車両と機械」研究発表会における優秀な論文の表彰、及び「R&m」優秀記事の表彰なども行い、功績、功労の高い方々を顕彰した。
平成26年度首に開設した協会の電子図書館は、開設後も順次掲載内容の充実を進めてきたが、28年度首からは全国「車両と機械」研究発表会の論文集及びJRMA海外鉄道調査団報告書を閲覧可能とした。
また、協会誌「R&m」の閲覧可能時期を前倒しし、発行の13ヶ月後から全文の閲覧を可能とした。
会員各位のご理解のもと、平成27年度、28年度の2年間にわたって「会員増強キャンペーン」を展開し、おかげさまで個人正会員、団体正会員とも増加することが出来た。
この結果、平成29年3月現在の団体正会員数は947社(対前年37社増)、個人正会員は7,880名(対前年673名増)となった。